暇人肥満児の“この本を読め!”
暇人肥満児お勧めのコーナーです
   
2000年8月読書日記 2000年9月30日発表
「コンセント」
田口ランディ
幻冬舎
コンセントにつながれた少年という鮮烈なイメージが、電話線1本で世界とつながるインターネットの情報空間を擬人化するという、言ってみればありがちな設定の陳腐さを補ってあまりある作品に仕上げている。つまり、購入するときの期待感に対し、読後感がいまいちということ。
「命」
柳美里
小学館
これってありですか?というのが正直な感想。流行作家という地位を最大限に利用して意趣返しをした一種暴力的なゴシップ本。週間ポストに発表すればよかったのでは?と思うくらいの内容だと思いますが、それゆえに当然のベストセラーで、面白くないといえば嘘になるのが苦しいところ。
「きれぎれ」
町田康
文藝春秋
本年度芥川賞受賞作。この作品で賞を取ったというよりも、一連の作品群で形作られた「町田康」という存在をこの辺で認知しておこう、ということなのでしょうが、賛否両論あっただろうし、少なくともこれが最高の作品ではないし(どちらかと言えば不出来の部類と思う)、「限りなく透明に近いブルー」(村上龍)の出現時のような才能がスパークするようなインパクトはない。
「花腐し」
松浦寿輝
文藝春秋
こちらも本年度芥川賞受賞作。プロットそのものの面白さよりも、文脈の中から立ち昇ってくる「町の匂い」(失われてしまった都市のイメージ)にこの作家の真骨頂がある。とはいえやはりこちらも前作「幽」の方が秀作で、まあアインシュタインもノーベル賞は「相対性理論」で取ったわけではないので、世の中そんなものなのかもしれない。
「オウム解体」
宮崎学
雷韻書房
「キツネ目の男」(グリコ事件)と「ああ言えば上祐」との対談。盛んに挑発する宮崎に対し、拍子抜けするほど第三者的な態度を崩さない上祐には、ひょっとすると大人物なのかもしれないと勘違いしてしまうほど、期待はずれ。(何を期待していたんじゃ?)せめても、国家を転覆させてしまうだけの展望と気概がなかったのであれば、亡くなった被害者の死にがいがない。
「ジャガーになった男」
佐藤賢一
集英社文庫
佐藤賢一は、西洋物の歴史文学ということで注目していましたが、処女作から読まないと駄目!という潔癖症と、買った本は積んでおいて新しいものから読むという矛盾した性格のせいで旧い本ですがようやく読みました。テーマと題名だけで面白いことは読む前から解かっていましたが、納得の快作。それにしても「王妃の離婚」にたどりつくのはいつのことやら。
「日本人のための宗教原論」
小室直樹
徳間書店
日本人の大半にとって宗教とは哲学的な概念に過ぎず、信仰という無比の信念ではありえない。現世利益だの、極楽往生だの、苦しいときの神頼みだの、理論的裏づけなしにその時々に自分に都合のいい解釈で物事に対処している。(宗教家ですらも)という私の勝手な考え方に理論的な背景を与えてくれたような本。
「ジョークでさらば二十世紀」
落合信彦
青春出版社
いつもトイレでは、椎名誠、赤瀬川原平、さくらももこ、テリー伊藤、爆笑問題などの「快便」によさそうな軽快な読み物を読んでいますが、そんな中の1冊。二十世紀の名言ジョーク編ということで、歴史の真実と人物の真価を知るのになかなか優れものでした。



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