暇人肥満児の“この本を読め!”
暇人肥満児お勧めのコーナーです

2000年3〜4月読書日記 2000年4月13日発表
「蔭の棲みか」
玄月
文藝春秋
本年度芥川賞受賞作。社会の底辺に蠢くもう一つの別の世界があり、ボランティアという自己満足的な関り方を拒絶している。底辺にさえも、あるいは底辺ゆえに序列と差別がある。ただ、昨年の「赤目四十八瀧心中未遂」(車谷長吉)に比べていかにも迫力不足。
「夏の約束」
藤野千夜
文藝春秋
同じく芥川賞受賞作。ホモセクシャルの世界という状況設定を外すと、これが何故芥川賞?というくらい、サクサクと読み進める軽いタッチの読み物。別に貶しているわけではなく、昨年の「日蝕」(平野啓一郎)のように脳に皺を寄せずに、楽しく読みました。
「これでいいのだ」
赤塚不二雄
メディアファクトリー
タモリ、柳美里、北野武、立川談志、D.カール、荒木経惟、松本人志との対談集。天才にしか理解できない天才の論理というものがあるとすれば、赤塚の天才は群を抜いている。ダウンタウンととんねるず、爆笑問題とナイナイ、片方に欠けているのは才能なのか、知性なのか。
「どの教えが優れているのか」
Sケシャヴジィ
徳間書店
哲学物語「ソフィーの世界」の宗教版。世界の六大宗教(ヒンズー、イスラム、仏教、ユダヤ、キリスト、無神論)の代表が一堂に介し、宗教オリンピックという名のディベートを繰り広げるという設定。こうして比較論争してもらうと、本来の仏教が信仰ではなく哲学で、無神論よりも宗教から遠いことがよくわかる。ちなみに私は神道派。
「グリーンマイル1〜6」
Sキング
角川文庫
随分前に読んだのですが、今、映画で上映中なので一言。映画の出来栄えは秀逸だと思うのですが、小説を読んだ身にとっては、あまりにも原作に忠実すぎてちょっとという感じ。原作はとっても薄い6分冊で、あわや主人公の運命やいかに、それでは次回をお楽しみに。という試みが売りだったわけで、映画ではそれが活かされず随分淡々と進行していくところが不満。それにしても長い映画でした。
「日本の公安警察」
青木理
講談社現代新書
続出する警察不祥事。坂本弁護士事件から歯車が狂いだしたように感じていたが、どうも腐蝕の根元はもっと深く、はるかに旧い。公安側の工作に対抗するように、オウムや極左の工作員が警察組織に深く浸透しての情報戦。右翼勢力との協調関係。国松長官狙撃事件と現役警察官犯行自供の衝撃。こんな本が出版されるほど極秘書類が漏洩すること自体が末期的。



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